早漏には薬による治療がある?
「早漏に効く薬はある?」
「飲み薬と塗り薬はどちらがいい?」
「麻酔クリームを使えば射精を遅らせられる?」
早漏(PE:premature ejaculation)に悩んでいる男性から、このような相談を受けることがあります。
結論からいうと、
早漏には複数の薬物療法があります。
大きく分けると、
① 脳・神経に作用して射精反射を遅らせる内服薬
と、
② 陰茎への刺激感覚を一時的に弱める外用薬・局所麻酔
があります。
さらにEDを合併している場合には、ED治療を組み合わせることがあります。
ただし、
「早漏なら全員同じ薬を使えばよい」というわけではありません。
生涯性早漏なのか、後天性早漏なのか。
感覚が強いのか。
射精コントロールが難しいのか。
EDを合併しているのか。
心理的な要因が強いのか。
こうした背景によって治療方法を選択します。
早漏治療に使われる薬は大きく4種類
早漏に対する代表的な薬物療法として、主に次のようなものがあります。
1.SSRIなどの内服薬
脳内のセロトニン系に作用し、射精までの時間を延長させることを目的とします。
2.外用薬・局所麻酔
リドカインやプリロカインなどによって、亀頭などの刺激感覚を一時的に低下させます。
3.PDE5阻害薬
本来はED治療薬です。
EDを合併している早漏では特に重要になります。
4.その他の薬剤
クロミプラミンやトラマドールなどが研究されていますが、それぞれ副作用や依存性などを考慮する必要があります。

内服薬① ダポキセチン
早漏治療の内服薬として代表的なのが、
ダポキセチン(dapoxetine)
です。
ダポキセチンはSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)の一種ですが、一般的な抗うつ薬として使用されるSSRIとは異なり、作用時間が比較的短く、早漏に対するオンデマンド治療を目的として開発されました。
欧州泌尿器科学会(EAU)のガイドラインでは、
ダポキセチン
または
リドカイン/プリロカインスプレー
が生涯性早漏に対する第一選択の薬物療法として推奨されています。
ダポキセチンはなぜ射精を遅らせる?
射精には、
セロトニン(5-HT)
という神経伝達物質が関係しています。
単純化すると、
性的刺激
↓
感覚神経から脳・脊髄へ情報伝達
↓
射精に関係する神経回路が活動
↓
射精反射
という流れがあります。
SSRIはセロトニンの再取り込みを阻害して、神経伝達を変化させます。
その結果、
射精反射が起こるまでの時間を延長させる方向に作用する
と考えられています。
つまり、
亀頭を麻痺させる薬ではありません。
局所麻酔とは作用する場所が異なります。
ダポキセチンにはどの程度の効果がある?
ランダム化比較試験を対象としたメタ解析では、ダポキセチンはプラセボと比較してIELT(膣内射精潜時)を有意に延長することが報告されています。
ただし、
薬を飲めば誰でも大幅に射精時間が延びるわけではありません。
効果には個人差があります。
また、射精時間だけでなく、
射精コントロール
早漏によるストレス
性的満足度
なども重要な評価項目です。
ダポキセチンの副作用
SSRI系薬剤では副作用にも注意が必要です。
ダポキセチンで報告されることがある症状として、
吐き気
めまい
頭痛
下痢
などがあります。
失神・起立性症状などにも注意が必要であり、併用薬や基礎疾患によって適否が変わります。
そのため自己判断で海外製品などを購入・服用するのではなく、医師による適応判断が重要です。
内服薬② 毎日服用するSSRI
ダポキセチン以外にも、
パロキセチン
セルトラリン
フルオキセチン
シタロプラム
などのSSRIについて早漏への効果が研究されています。
これらは本来、うつ病や不安障害などに使用される薬剤です。
しかし、
SSRIの副作用として射精が遅くなること
を利用して、早漏治療に使用されることがあります。
早漏に対する使用は国や薬剤によって承認状況が異なり、適応外使用となる場合があります。
毎日飲むSSRIとダポキセチンは同じ?
同じSSRI系でも使用方法が異なります。
ダポキセチン
短時間作用型
↓
性交に合わせたオンデマンド治療
一般的なSSRI
比較的長時間作用
↓
継続的に服用して射精閾値を変化させる
という違いがあります。
そのため、
「SSRIならどれでも性交直前に飲めば同じ」ではありません。
薬剤によって薬物動態や使用方法が異なります。
SSRIの注意点
SSRIでは、
吐き気
眠気
倦怠感
発汗
性欲の変化
勃起機能への影響
射精しにくくなる
などが起こる可能性があります。
また、継続使用しているSSRIを自己判断で突然中止すると離脱症状が生じることがあります。
したがって、
自己判断で開始・増量・中止しないこと
が重要です。
内服薬③ クロミプラミン
クロミプラミンは三環系抗うつ薬の一つです。
セロトニンなどの神経伝達に作用するため、射精を遅延させる作用が研究されています。
EAUガイドラインでは、
毎日のSSRI
または
毎日/オンデマンドのクロミプラミン
が、第一選択薬が適さない場合などの代替治療として位置づけられています。
ただし、
口渇
眠気
めまい
便秘
などの副作用が問題になる場合があります。
外用薬・局所麻酔による早漏治療
もう一つの重要な治療方法が、
局所麻酔による刺激感覚の調整
です。
代表的な成分には、
リドカイン
プリロカイン
などがあります。
クリーム、ジェル、スプレーなどの剤形が研究されています。
局所麻酔はなぜ早漏に効く?
局所麻酔は末梢の感覚神経から伝わる刺激を一時的に弱めます。
例えば、
亀頭への刺激
↓
感覚神経へ伝達
↓
脊髄・脳へ刺激が伝わる
↓
性的興奮・射精感が高まる
↓
射精反射
という流れがあります。
局所麻酔によって、
刺激入力を弱める
↓
射精感が急激に上昇するのを抑える
↓
射精までの時間を延ばす
ことを目的とします。

局所麻酔の効果にはエビデンスがある?
あります。
局所麻酔による早漏治療については複数のランダム化比較試験とメタ解析があります。
リドカイン、リドカイン/プリロカイン製剤などは、プラセボと比較してIELTを延長することが報告されています。
そのため、
局所麻酔は単なる民間療法ではなく、医学的エビデンスのある早漏治療の一つ
です。
特に、
亀頭への刺激を強く感じる
刺激が入ると射精感が急激に高まる
という男性では、治療選択肢として検討しやすい方法です。
局所麻酔は「感覚をゼロ」にすればよい?
違います。
ここは非常に重要です。
局所麻酔を使う目的は、
完全に感覚をなくすことではありません。
麻酔が強すぎると、
刺激を感じにくすぎる
↓
性的快感が低下する
↓
勃起を維持しにくくなる
↓
性交そのものが難しくなる
ということがあります。
したがって、
「麻酔が強いほど早漏治療として優れている」わけではありません。
必要なのは、
射精コントロールがしやすい程度に刺激を調整すること
です。
局所麻酔の副作用・注意点
局所麻酔では、
陰茎の感覚低下
ヒリヒリ感
局所刺激
赤み
などが起こる可能性があります。
さらに重要なのが、
パートナーへの麻酔成分の移行
です。
薬剤が陰茎表面に残った状態で性交すると、パートナー側の感覚も低下する可能性があります。
製品によって使用方法が異なるため、洗浄やコンドームの使用などについて、その製品の説明と医師の指示に従う必要があります。
「早漏スプレー」は全部同じではない
インターネットでは、
早漏防止スプレー
感度低下クリーム
持続スプレー
など、さまざまな製品が販売されています。
しかし、
成分・濃度・品質・安全性は同じではありません。
医療用として研究されているリドカイン/プリロカイン製剤と、成分や含有量が不明確なインターネット製品を同じものとして考えるべきではありません。
PDE5阻害薬は早漏治療薬?
シルデナフィルやタダラフィルなどのPDE5阻害薬は、
基本的にはED治療薬です。
しかし早漏とEDは併存することがあります。
例えば、
途中で萎えるのが怖い
↓
急いで性交する
↓
興奮・緊張が高まる
↓
射精コントロールが難しくなる
というケースがあります。
この場合には、
EDを治療することで結果的に射精コントロールが改善する可能性
があります。
早漏+EDではEDの評価が重要
「最近になって射精が早くなった」
という男性では特にEDの有無を確認します。
後天性早漏では、
ED
前立腺・泌尿生殖器の問題
心理的ストレス
不安
甲状腺機能など身体的要因
が背景にある場合があります。
そのため、
後天性早漏では原因となっている疾患・状態を先に治療する
ことが重要です。
トラマドールは早漏に使える?
トラマドールは本来、
オピオイド系鎮痛薬
です。
射精を遅延させる作用が報告されており、早漏に対する研究もあります。
しかし、
眠気
吐き気
めまい
などに加え、
依存・乱用のリスク
があります。
そのためEAUガイドラインでも、より確立された治療が適さない場合などに慎重に検討する後順位の選択肢とされています。
早漏だけを目的として安易に使用する薬ではありません。

内服薬と局所麻酔、どちらを選ぶ?
単純に、
「どちらが強いか」
で選ぶものではありません。
小帯・亀頭などへの刺激を強く感じる
→ 局所麻酔など感覚へのアプローチ
刺激部位に関係なく射精コントロールが難しい
→ SSRIなど中枢への薬物療法を検討
EDもある
→ EDの評価・治療を優先または併用
緊張や不安が強い
→ 心理・行動的アプローチを組み合わせる
というように考えます。
薬だけで早漏を治療すればいい?
必ずしもそうではありません。
早漏治療では、
薬物療法
+
Stop-Start法などのトレーニング
+
心理・行動的アプローチ
を組み合わせることがあります。
薬によって射精までの余裕ができることで、
「射精直前になって初めて気づく」
状態から、
「射精感が上がっている途中で気づく」
状態へ変えられれば、射精コントロールの練習がしやすくなる可能性があります。

早漏治療薬についてよくある質問
Q1.早漏に効く飲み薬はありますか?
あります。ダポキセチンやSSRIなど、射精を遅延させる薬剤について臨床研究があります。ただし、薬剤ごとに承認状況や使用方法が異なります。
Q2.局所麻酔で本当に射精は遅くなりますか?
リドカイン・プリロカインなどの局所麻酔について、プラセボと比較してIELTを延長した複数の臨床研究があります。ただし効果には個人差があります。
Q3.局所麻酔を使うと感覚がなくなりますか?
使用量や製剤によっては感覚がかなり低下することがあります。しかし、早漏治療では感覚を完全になくすことが目的ではありません。
Q4.麻酔クリームを多く塗ればもっと効きますか?
推奨できません。過剰な使用は必要以上の感覚低下や局所刺激などにつながる可能性があります。製品ごとの用法と医師の指示に従う必要があります。
Q5.ED薬で早漏も改善しますか?
EDを合併している場合には重要な治療になります。EDが射精を急ぐ原因になっているケースでは、ED治療によって射精コントロールにも良い影響が出る可能性があります。
Q6.薬を飲めば早漏は完全に治りますか?
薬物療法は射精時間や射精コントロールを改善するための方法ですが、「薬を飲めば永久に治る」とは限りません。早漏のタイプや原因によって治療目標は異なります。
Q7.薬とStop-Start法を一緒に行ってもいいですか?
早漏では薬物療法と行動・心理的アプローチを組み合わせることがあります。特に射精コントロールを身につけるという観点では、薬だけではなくトレーニングを組み合わせる考え方があります。
まとめ|早漏の薬は「原因に合わせて選ぶ」ことが重要
早漏の薬物療法には、
SSRIなどの内服薬
リドカイン・プリロカインなどの外用・局所麻酔
EDを伴う場合のPDE5阻害薬
など複数の方法があります。
重要なのは、
早漏だから薬を飲むのではなく、なぜ射精が早くなっているのかを確認すること
です。
例えば、
刺激感覚が強い
のであれば局所へのアプローチ。
射精コントロールそのものが難しい
のであれば中枢に作用する薬物療法。
EDを合併している
のであればEDの治療。
心理・緊張・ストレスが強い
のであれば心理・行動的アプローチ。
というように、治療方針は変わります。
また、
内服薬と局所麻酔は作用する場所が違います。
内服薬は主として脳・神経系の射精反射を調整します。
局所麻酔は陰茎から入る刺激感覚を一時的に弱めます。
どちらか一方がすべての男性に優れているわけではありません。
MEN’S KIA CLINICでは、射精時間だけではなく、
早漏が昔からあるのか
最近になって起こったのか
どこを敏感に感じるのか
射精をコントロールできるのか
EDを合併していないか
心理・身体的要因がないか
などを確認し、原因に応じた治療方法を検討します。
監修医プロフィール
雲山 盛秀 医師
MEN’S KIA CLINIC
診療領域: 男性治療、美容外科、美容皮膚科
資格・経歴: 医師、脳神経外科領域での診療経験、男性治療経験20年
参考文献
- European Association of Urology. EAU Guidelines on Sexual and Reproductive Health: Disorders of Ejaculation.
- American Urological Association / Sexual Medicine Society of North America. Disorders of Ejaculation: An AUA/SMSNA Guideline.
- Castiglione F, et al. Current Pharmacological Management of Premature Ejaculation: A Systematic Review and Meta-analysis.
- Cooper K, et al. Interventions to treat premature ejaculation: a systematic review.
- Shah MA, et al. Topical Anesthetics and Premature Ejaculation: A Systematic Review and Meta-Analysis.
- Pharmacotherapy of premature ejaculation: a systematic review and network meta-analysis.