ED治療は「薬を飲む」だけではない
ED(勃起不全)の治療というと、バイアグラやシアリスなどのED治療薬を思い浮かべる方が多いでしょう。
現在もPDE5阻害薬はED治療における重要な選択肢ですが、ED治療は内服薬だけではありません。
近年では、
- 陰茎ボトックス
- 陰圧式勃起補助具
- 陰茎海綿体注射
- 低強度体外衝撃波治療
- 再生医療として研究されている治療
- 陰茎プロステーシス
など、さまざまな治療が研究・実施されています。
特に注目されている治療の一つが、**ボツリヌストキシンを陰茎海綿体へ注入する「陰茎ボトックス」**です。
2025年に公表されたシステマティックレビュー・メタ解析では、EDに対する陰茎海綿体内ボツリヌストキシンA投与について、IIEF/SHIMなどの改善が報告されています。
一方で、まだ研究数が少なく、長期的な有効性や最適な投与方法などについては、さらなる研究が必要です。
つまり、「新しい=従来治療より優れている」とは限りません。
EDの原因、重症度、既往歴、これまでの治療への反応などから治療を選択することが重要です。
そもそもEDはなぜ起こる?
勃起には、
性的刺激
↓
脳・神経から陰茎へ信号
↓
陰茎海綿体の平滑筋が弛緩
↓
陰茎への血流増加
↓
陰茎海綿体が血液で満たされる
↓
十分な硬さを得て維持
という一連の反応が必要です。
このどこかに問題が生じると、
- 十分に硬くならない
- 勃起まで時間がかかる
- 挿入前に萎える
- 性交途中で中折れする
- ED薬を飲んでも十分に反応しない
といった症状が起こります。
ED治療で重要なのは「原因」を確認すること
EDには、
血管性
動脈硬化、高血圧、糖尿病、喫煙など
神経性
糖尿病性神経障害、前立腺手術後など
内分泌性
テストステロン低下など
心因性
ストレス、性交への緊張、予期不安など
薬剤性
一部の降圧薬、向精神薬など
があります。
複数の原因が重なっている混合性EDもあります。
そのため、「EDになったら全員同じ薬」という考え方ではなく、原因を確認して治療方法を選ぶことが重要です。
現在のED治療にはどのようなものがある?
現在検討される主なED治療を整理すると、次のようになります。
| 治療 | 主な特徴 |
|---|---|
| 生活習慣改善 | 血管・代謝リスクへの対応 |
| PDE5阻害薬 | 代表的な薬物治療 |
| 陰茎ボトックス | 陰茎海綿体平滑筋への作用を狙う注入治療 |
| 陰圧式勃起補助具 | 陰圧を利用して勃起を補助 |
| 陰茎海綿体注射 | 血管作動薬を海綿体へ投与 |
| 低強度体外衝撃波 | 血管性EDなどを対象に研究・実施 |
| PRPなど | 再生医療領域として研究段階 |
| 陰茎プロステーシス | 重症・難治性EDなどで検討 |
治療によってエビデンス、侵襲性、持続性、費用、適応が大きく異なります。
PDE5阻害薬
代表的なED治療薬には、
- シルデナフィル
- タダラフィル
- バルデナフィル
などがあります。
性的刺激によって生じるNO-cGMP系の反応を増強し、陰茎海綿体の平滑筋弛緩と血流増加を補助します。
現在もED治療における主要な治療選択肢です。
バイアグラ・シアリス・バルデナフィル系の違いを詳しく知りたい方は、3剤比較の記事をご覧ください。
→関連記事:バイアグラ・シアリス・レビトラの違い
ED治療薬にはデメリットもある
PDE5阻害薬は多くの患者さんに使用されていますが、すべての人に適しているわけではありません。
副作用として、
- 頭痛
- 顔のほてり
- 鼻づまり
- 消化不良
- 動悸
- めまい
などがみられることがあります。
薬剤によっては視覚症状や筋肉痛などが起こることもあります。
また、硝酸薬との併用は禁忌です。
さらに、
「性行為の前に薬を飲みたくない」
「薬を飲むタイミングを考えるのが負担」
「副作用が気になる」
「ED薬を使用しても十分な硬さが得られない」
という方もいます。
MEN’S KIA CLINICが内服薬だけに依存しない理由
MEN’S KIA CLINICでは、PDE5阻害薬をED治療の中心に据えるのではなく、患者さんの症状や既往歴、治療歴、副作用への懸念などを確認し、陰茎ボトックスを含めた治療を重点的に検討しています。
これは「ED治療薬が悪い」という意味ではありません。
PDE5阻害薬には豊富な使用実績があり、現在も主要なED治療の一つです。
一方で、
毎回内服する必要がある
副作用が生じる場合がある
禁忌となる薬剤がある
十分に反応しない患者さんがいる
という特徴もあります。
当院ではこうした点も考慮し、EDの原因と患者さんの希望に応じて治療を検討します。
注目される「陰茎ボトックス」とは?
陰茎ボトックスは、ボツリヌストキシンを陰茎海綿体へ注入するED治療です。
ボツリヌストキシンというと、
「筋肉を動かなくする薬では?」
と疑問に思う方もいるでしょう。
ED治療で注目されているのは、ボツリヌストキシンによる陰茎海綿体平滑筋への作用です。
陰茎ボトックスの施術内容・料金・診療の詳細は治療ページで確認できます。
陰茎ボトックスがEDへ作用する仕組み
勃起していない状態では、交感神経系の作用などによって陰茎海綿体の平滑筋は一定の収縮状態にあります。
性的刺激によってNOなどが作用すると平滑筋が弛緩し、
陰茎への血流が増加
↓
海綿体が血液で満たされる
↓
勃起
が起こります。
陰茎ボトックスでは、ボツリヌストキシンによって平滑筋の収縮に関係する神経伝達へ作用し、海綿体平滑筋が弛緩しやすい状態を作ることで、勃起時の血液流入を補助する可能性が研究されています。

陰茎ボトックスの研究はどこまで進んでいる?
陰茎ボトックスは単なる理論上の治療ではなく、ヒトを対象とした臨床研究が行われています。
2025年のシステマティックレビュー・メタ解析では、2件のランダム化比較試験と4件の後ろ向き研究が解析され、ボツリヌストキシンA投与後にIIEF-EFやSHIMなどの改善が報告されました。
2件のRCTを統合した解析では、12週時点のSHIMスコアが生理食塩水群より平均4.35点高い結果でした。
ただし、対象患者、投与量、製剤、併用治療などが研究によって異なります。
そのため、現段階では有望な治療ではあるものの、標準的なED治療として確立されている段階ではありません。
どのようなEDで陰茎ボトックスが研究されている?
特に研究対象となっているのが、
PDE5阻害薬で十分な効果が得られない難治性ED
です。
実際にプラセボ対照RCTでは、PDE5阻害薬に反応しにくいED患者を対象としてボツリヌストキシンAが研究されています。
一方で、
ED薬が効かない人だけが対象
と決まっているわけではありません。
治療を検討する際には、
- EDの原因
- 重症度
- 朝立ち
- 中折れ
- 性欲
- PDE5阻害薬の治療歴
- 糖尿病
- 高血圧
- 神経障害
- 心理的要因
などを確認します。
陰茎ボトックスの効果はいつから?
臨床研究では、治療後数週間の段階から勃起機能の変化が評価されています。
ただし、効果の発現時期や程度には個人差があります。
「注射した直後から必ず勃起する」という治療ではありません。
効果はどのくらい続く?
ボツリヌストキシンの作用は永久ではありません。
近年のレビューでは、EDに対する研究で数か月にわたる効果が報告されています。
ただし、製剤、投与量、患者背景などによって異なり、すべての患者さんで一定期間効果が続くとは限りません。
陰茎ボトックスの副作用・リスク
これまでの臨床研究では、
- 注射部位の痛み
- 出血
- 内出血
など局所的な有害事象が考えられます。
2025年のシステマティックレビューでは、重篤な全身性副作用は報告されず、まれな局所症状として一過性の陰茎痛が報告されています。また、持続勃起症の報告も1例ありました。
ただし、症例数そのものがまだ限られているため、「副作用が少ない治療」と表現するに留めています。

低強度体外衝撃波治療(Li-ESWT)
陰茎へ低強度の衝撃波を照射する治療です。
血管性EDなどを対象として研究されており、血管機能の改善を目的とする治療として注目されています。
一方、治療プロトコルや対象患者によって結果が異なり、どの患者さんにどの程度有効なのかについては検討が続いています。
PRP・幹細胞などの再生医療
PRP(多血小板血漿)や幹細胞などを利用したED治療も研究されています。
「EDを根本的に治す再生医療」と紹介されることがありますが、現時点では慎重な評価が必要です。
PRPについては臨床研究が増えているものの、標準化された治療として確立しているとはいえません。
幹細胞治療も研究段階です。
陰圧式勃起補助具
陰茎へ陰圧をかけることで血液を流入させ、勃起を補助する方法です。
薬を使用しないことが大きな特徴です。
内服薬が使用できない場合などにも検討できます。
陰茎海綿体注射
血管作動薬を陰茎海綿体へ直接注入し、勃起を誘発する治療です。
PDE5阻害薬で十分な効果が得られないEDでも有効な場合があります。
一方、
- 注射への抵抗
- 陰茎痛
- 持続勃起症
- 線維化
などに注意が必要です。
陰茎プロステーシス
薬物治療やその他の治療で十分な改善が得られない重症EDでは、陰茎プロステーシス手術が選択肢になる場合があります。
陰茎内部へ人工物を挿入するため侵襲性は高くなりますが、難治性EDに対する確立された外科的選択肢です。
「EDの根本治療」とは何か?
ED治療でよく使われる言葉が「根本治療」です。
しかし医学的には注意が必要です。
EDの原因が、
糖尿病
であれば糖尿病の管理、
高血圧・肥満
であれば血管リスクの改善、
テストステロン低下
であればホルモン評価、
心因性
であれば心理的要因への対応、
などが原因に対する治療になります。
そのため、特定の注射や機器治療を一律に「EDを根本から治す治療」と断定することは適切ではありません。

MEN’S KIA CLINICのED治療方針
MEN’S KIA CLINICでは、EDを単に「ED薬を処方する病気」とは考えていません。
まず、
硬さが足りないのか
中折れするのか
性的刺激への反応が弱いのか
性欲そのものが低下しているのか
これまでED薬を使用して効果があったのか
などを確認します。
そのうえで、当院では陰茎ボトックスをED治療の重要な選択肢として位置づけています。
一方で、陰茎ボトックスは現在のED標準治療として確立された治療ではありません。
新しい治療だから無条件に優れているわけではなく、期待できる効果、限界、副作用、既存治療との違いを説明したうえで治療を検討します。
治療選択の前に、硬さ・中折れ・朝立ちなど現在の症状を整理することが重要です。
→関連記事:EDセルフチェック
ED薬を使いたくない人にも治療選択肢はある
「ED薬を毎回飲みたくない」
「頭痛やほてりが気になる」
「ED薬が効かなかった」
「薬を飲んでいることをパートナーに知られたくない」
といった理由から、内服以外の治療を希望する方もいます。
ED治療は内服薬だけではありません。
重要なのは、ED薬を飲む・飲まないという二択ではなく、自分のEDの原因と希望に合った治療を選ぶことです。
よくある質問
Q1.現在最も新しいED治療は何ですか?
陰茎ボトックス、低強度体外衝撃波、PRP、幹細胞、電気刺激など、複数の治療法が研究されています。
ただし「最も新しい=最も効果が高い」という意味ではありません。
Q2.陰茎ボトックスはEDに効果がありますか?
臨床研究ではIIEF/SHIMや勃起硬度、陰茎血流などの改善が報告されています。
一方、研究数や長期データはまだ限られており、さらなる検証が必要です。
Q3.陰茎ボトックスはED薬とは違いますか?
違います。
PDE5阻害薬は内服によってNO-cGMP系の勃起反応を補助します。
陰茎ボトックスは陰茎海綿体へボツリヌストキシンを注入し、平滑筋の収縮に関係する神経伝達へ作用させることを狙った治療です。
Q4.陰茎ボトックスは毎回注射するのですか?
性交のたびに注射する治療ではありません。
ただし効果は永久ではなく、持続期間には個人差があります。
Q5.ED薬より陰茎ボトックスの方が優れていますか?
単純には比較できません。
PDE5阻害薬は標準的なED治療として広く使用されている一方、陰茎ボトックスは新しい治療として研究が進められている段階です。
治療の適否はEDの原因や治療歴などによって異なります。
Q6.ED薬が効かない人でも陰茎ボトックスを受けられますか?
PDE5阻害薬に十分反応しないED患者を対象とした陰茎ボトックスの臨床研究があります。
ただし、ED薬が効かない理由を確認してから適応を判断することが重要です。
関連記事:ED薬が効かない理由
Q7.陰茎ボトックスに副作用はありませんか?
副作用がないとはいえません。
注射による痛み、出血、内出血などが考えられます。研究では一過性の陰茎痛などが報告されています。
Q8.ED薬を使わずにED治療できますか?
可能な場合があります。
原因への治療、生活習慣改善、陰圧式勃起補助具、注入治療など、内服薬以外の選択肢があります。
Q9.EDの最新治療なら根本的に治りますか?
治療によります。
EDには血管、神経、糖尿病、ホルモン、心理などさまざまな原因があるため、特定の治療ですべてのEDが根治するとはいえません。
まとめ|ED治療は「内服薬だけ」から多様な選択肢へ
ED治療には現在、
生活習慣改善
PDE5阻害薬
陰茎ボトックス
陰圧式勃起補助具
陰茎海綿体注射
低強度体外衝撃波
手術治療
など、さまざまな選択肢があります。
なかでも陰茎ボトックスは、陰茎海綿体平滑筋への作用を利用した新しい治療として臨床研究が進んでいます。
一方、現時点では標準的なED治療として確立された段階ではなく、研究数や長期データには限界があります。
MEN’S KIA CLINICでは、ED治療薬だけに依存せず、EDの原因・症状・治療歴・副作用への懸念・患者さんの希望などを確認し、陰茎ボトックスを重点的な治療選択肢として検討します。
重要なのは、
「最新だから選ぶ」
のではなく、
「自分のEDの原因に合った治療を選ぶ」
ことです。
監修医プロフィール
雲山 盛秀 医師
MEN’S KIA CLINIC
診療領域
男性治療
美容外科
美容皮膚科
資格・経歴
医師
脳神経外科領域での診療経験
男性治療経験20年以上
施術経験2万件以上(全施術累計)
ED、早漏、感度など男性特有の悩みに対し、症状、生活習慣、既往歴、治療歴などを確認し、一人ひとりに合わせた治療方針を提案しています。
参考文献
- American Urological Association. Erectile Dysfunction (ED) Guideline.
- European Association of Urology. EAU Guidelines on Sexual and Reproductive Health: Management of Erectile Dysfunction.
- Aboumarzouk OM, et al. The effectiveness and safety of intracavernosal botulinum toxin injections in the management of erectile dysfunction: a systematic review and meta-analysis of clinical studies. Sex Med. 2025.
- Intracavernosal Botulinum Toxin Injection for Erectile Dysfunction: A Comprehensive Systematic Review. 2025.
- El-Shaer W, et al. Safety and efficacy of botulinum neurotoxin in the treatment of erectile dysfunction refractory to phosphodiesterase inhibitors: Results of a randomized controlled trial.
- Suharyani S, et al. Efficacy and safety of platelet-rich plasma intracavernous injection for patients with erectile dysfunction: A systematic review, meta-analysis, and meta-regression. Asian J Urol. 2024.