男性更年期になると早漏になる?
「40代・50代になってから射精が早くなった」
「男性ホルモンが低下すると早漏になる?」
「テストステロンを増やせば早漏は改善する?」
このような疑問を持つ男性は少なくありません。
結論からいうと、
テストステロン低下が、そのまま早漏を引き起こすとは証明されていません。
むしろ研究では、早漏の男性でテストステロンが高い傾向を示した報告もあります。一方、テストステロン低下は性欲低下、ED、活力低下などに関係し、それらを介して性生活や射精コントロールへ間接的に影響する可能性があります。
したがって、
テストステロンが低い → 早漏
という単純な関係ではありません。
男性更年期の年代になってから急に射精が早くなった場合には、テストステロンだけを見るのではなく、
ED・中折れ
性欲の変化
ストレス・不安
睡眠や生活習慣
甲状腺などの内分泌異常
泌尿器疾患
などを総合的に確認することが重要です。
そもそもテストステロンとは?
テストステロンは、主に精巣で作られる男性ホルモンです。
男性の身体では、
性欲
勃起機能
筋肉・骨
造血
気分・意欲
男性性機能
などに関係しています。
年齢とともにテストステロンが低下することはありますが、単純に年齢だけで男性更年期と診断するわけではありません。
テストステロン低値に加えて、それに関連する症状を評価する必要があります。
2026年版EAU Sexual and Reproductive Health Guidelinesでも、男性性腺機能低下症について新しいエビデンスに基づく大幅な更新が行われています。
男性更年期(LOH症候群)とは?
男性更年期として知られているのが、**LOH症候群(Late-Onset Hypogonadism:加齢男性性腺機能低下症候群)**です。
症状には個人差がありますが、
性欲低下
ED
疲労感
意欲低下
気分の変化
筋力低下
などがみられることがあります。
ここで早漏との関係を考える場合、
LOH症候群の代表的な症状として「早漏」が直接位置付けられているわけではありません。
そのため、
「最近早漏になったから男性更年期だ」
とは判断できません。

テストステロンと射精には関係がある?
テストステロンは射精機能にも何らかの関係を持つと考えられています。
ただし、その関係は単純ではありません。
興味深い研究があります。
性機能障害で受診した男性2,437人を調査した研究では、25~40歳の早漏男性では、他の男性と比較して総テストステロンと遊離テストステロンが高い傾向が認められました。
反対に55~70歳では、遅漏の男性でテストステロンが低い傾向が認められました。
つまり、
テストステロンが低いほど射精が早くなる
という結果ではありません。
むしろ、
高いテストステロン ↔ 早い射精との関連
低いテストステロン ↔ 遅い射精との関連
を示唆するデータがあります。
ただし、これは「テストステロンが高いから早漏になる」という因果関係を証明したものではありません。
最近の研究でも早漏男性のテストステロンが高い?
2024年に報告された前向き症例対照研究では、早漏男性126人と健常男性92人についてホルモンなどを比較しています。
その結果、早漏群では総テストステロンが対照群より有意に高いという結果でした。
別の研究でも、早漏男性では遊離テストステロンが高かったとの報告がありますが、総テストステロンについては有意差がありませんでした。研究者自身も因果関係や臨床的意義について、さらに大規模な研究が必要としています。
したがって現在のエビデンスからは、
「テストステロン低下が早漏の主要原因」と考える根拠は乏しい
という整理が適切です。
では、なぜ男性更年期の年代で早漏になることがある?
ここが臨床的には重要です。
40代・50代以降でテストステロン低下を伴う男性では、早漏そのものより、
EDを介して間接的に射精が早くなる
ケースを考える必要があります。
例えば、
テストステロン低下・加齢など
↓
性欲・勃起機能が低下
↓
性交中の硬さを維持しにくい
↓
「途中で萎えるかもしれない」
↓
「萎える前に射精しなければ」と焦る
↓
刺激や射精を過剰に意識
↓
射精コントロールが難しくなる
という流れです。
AUA/SMSNAガイドラインでも、後天性早漏ではEDを重要な併存疾患として評価し、勃起を維持できない不安から、勃起が失われる前に射精しようとする行動が関係する可能性を指摘しています。

早漏になったらテストステロンを測るべき?
全員に必要なわけではありません。
AUA/SMSNAガイドラインでは、生涯性早漏に対して追加の検査をルーチンに行うことは推奨されていません。
一方、以前は問題なかったのに途中から早くなった後天性早漏では、症状や病歴に応じて追加検査を行うことがあります。
特に、
性欲が明らかに低下した
ED・中折れが出てきた
疲れやすい
意欲が低下した
筋力低下などを感じる
その他、性腺機能低下を疑う症状がある
場合には、視床下部―下垂体―精巣系を含むホルモン評価を検討できます。AUA/SMSNAも、後天性早漏で臨床的に疑われる場合には、性腺系、甲状腺、糖代謝、前立腺炎・慢性骨盤痛症候群などに関連する検査を利用できるとしています。

テストステロン補充療法で早漏は改善する?
ここは誤解しやすいポイントです。
早漏を改善する目的だけでテストステロン補充療法を行う治療は、標準的な早漏治療ではありません。
AUA/SMSNAの早漏治療ガイドラインでも、早漏の標準的な薬物治療としてテストステロン補充療法は位置付けられていません。
したがって、
早漏がある
↓
テストステロンを投与する
↓
射精時間を延ばす
という治療を基本にするものではありません。
一方、本当にテストステロン欠乏があり、性欲低下やEDなどの症状を伴っている場合には、性腺機能低下症そのものについて適切な評価・治療を検討します。
その結果、性機能全体に変化がみられる可能性はありますが、
「テストステロン補充=早漏治療」
ではないことを明確にしておく必要があります。
むしろ低テストステロンでは「遅漏」が問題になることも
早漏の記事では、この点も知っておくと理解しやすくなります。
テストステロン低下と射精機能については、早漏だけではなく**遅漏(射精まで非常に時間がかかる、または射精できない状態)**との関係も研究されています。
AUA/SMSNAガイドラインでは、テストステロン値が低くなるにつれて遅漏・射精障害に一致する症状が増える可能性があるとして、遅漏ではテストステロン測定を支持しています。
さらに、テストステロン欠乏を伴う遅漏では、血中テストステロンを正常化する治療を検討できるとしています。
つまり、
テストステロンと射精の関係は「低いほど早くなる」というものではありません。
男性更年期の年代で「急に早漏」なら何を調べる?
以前は問題なかったのに40代・50代以降で射精が急に早くなったのであれば、後天性早漏として原因を考えます。
重要なのは、
「テストステロンが下がったから」
と最初から決めつけないことです。
AUA/SMSNAガイドラインでは、後天性早漏はED、糖尿病、慢性前立腺炎などの併存疾患と関連することがあり、臨床的な疑いに応じて甲状腺機能、糖代謝、性腺系などの検査を行う考え方を示しています。
特に、
ED
甲状腺機能
糖代謝
前立腺・泌尿器症状
心理的ストレス
などは確認する価値があります。
甲状腺と早漏にも関係がある?
あります。
内分泌疾患の中では、テストステロンだけではなく甲状腺機能も重要です。
AUA/SMSNAガイドラインでも、甲状腺機能亢進症と早漏の関連が示されており、後天性早漏で臨床的に疑われる場合には甲状腺機能検査を検討できます。
そのため、
「最近急に早漏になった」
という男性で身体的な変化もある場合には、
男性ホルモンだけを測ればよいわけではありません。
男性更年期と早漏が同時にある場合の治療
治療は、原因を分けて考えます。
EDが強い場合
硬さ不足・中折れがあり、
「萎える前に射精しなければ」
という焦りがあるなら、EDの治療を含めて考えます。
AUA/SMSNAガイドラインでも、早漏にEDを併発している場合にはEDを適切に治療することを推奨しています。
心理・ストレスが強い場合
予期不安やパフォーマンス不安が強ければ、
Stop-Start法
刺激コントロール
心理的アプローチ
などを検討します。
感覚の関与が強い場合
亀頭への刺激が強く、刺激によって急速に射精感が高まる場合には、
局所麻酔
などの感覚調整を検討します。
また、診察によって適応を判断したうえで、亀頭ヒアルロン酸注入によって組織に厚みを持たせ、刺激感覚を調整することを目的とした治療が検討される場合があります。
ただし、男性更年期だから亀頭ヒアルロン酸が適応になるわけではなく、感覚の関与を確認して治療を選択します。
テストステロン欠乏が疑われる場合
ホルモン検査を行い、本当に性腺機能低下症があるかを評価します。
テストステロン補充療法を行うかどうかは、早漏ではなく性腺機能低下症としての適応から判断します。

よくある質問
Q1.テストステロンが低いと早漏になりますか?
単純に「低いほど早漏になる」とはいえません。むしろ早漏男性でテストステロンが高かった研究もあります。テストステロンと射精には関連が示唆されていますが、因果関係は確立していません。
Q2.男性更年期の代表的な症状に早漏はありますか?
早漏だけで男性更年期を判断することはできません。性欲低下、ED、疲労感、意欲低下など他の症状と、必要に応じてホルモン値を確認します。
Q3.50代になって突然早漏になりました。テストステロンを測るべきですか?
性欲低下、ED、男性更年期を疑う全身症状などがあれば検討できます。ただし後天性早漏では、ED、甲状腺、糖代謝、前立腺・泌尿器系など他の原因も確認することが重要です。
Q4.テストステロン注射で早漏は治りますか?
早漏だけを目的としたテストステロン補充療法は標準的な早漏治療ではありません。テストステロン欠乏症が確認された場合には、その疾患に対する治療として補充療法を検討します。
Q5.テストステロンが低いと逆に射精が遅くなることもありますか?
その可能性を示す研究があります。低テストステロンは遅漏・射精障害との関連も報告されており、AUA/SMSNAガイドラインでも遅漏患者ではテストステロン測定を支持しています。
Q6.早漏とEDが同時に出てきました。
EDが早漏へ影響している可能性があります。特に「萎える前に」と焦るようになってから射精が早くなった場合には、EDを含めて評価することが重要です。
Q7.早漏ならホルモン検査を全員受けたほうがいいですか?
いいえ。生涯性早漏ではルーチンの追加検査は推奨されていません。後天性早漏で性欲低下やEDなどがあり、ホルモン異常が疑われる場合に検討します。
まとめ|「テストステロン低下=早漏」ではない
テストステロンは男性の性機能に重要なホルモンで、射精機能にも関与している可能性があります。
しかし、
男性更年期やテストステロン低下が直接早漏を起こす、と単純に説明することはできません。
実際には早漏男性でテストステロンが高かった研究もあり、低テストステロンはむしろ遅漏・射精障害との関連も報告されています。
一方、男性更年期の年代では、
テストステロン低下・加齢
↓
性欲・勃起機能の変化
↓
ED・中折れ
↓
「萎える前に」という焦り
↓
射精コントロールが難しくなる
という間接的な経路は考えられます。
したがって40代・50代以降で急に早漏になった場合には、
テストステロン
だけに原因を求めるのではなく、
ED・中折れ、性欲、心理・ストレス、甲状腺、糖代謝、泌尿器症状、感覚
などを総合的に確認することが重要です。AUA/SMSNAも、後天性早漏では臨床的な疑いに応じた性腺系・甲状腺・糖代謝などの評価を認めています。
MEN’S KIA CLINICでは、射精時間だけでなく、発症時期、ED、性欲、心理状態、感覚、男性更年期症状などを確認し、原因に応じて治療方法を検討します。
監修医プロフィール
雲山 盛秀 医師
MEN’S KIA CLINIC
診療領域: 男性治療、美容外科、美容皮膚科
資格・経歴: 医師、脳神経外科領域での診療経験、男性治療経験20年以上
参考文献
- Shindel AW, et al. Disorders of Ejaculation: An AUA/SMSNA Guideline. J Urol. 2022. 早漏の評価、後天性早漏におけるED・ホルモン・甲状腺・糖代謝などの評価について記載されています。
- Corona G, et al. Different testosterone levels are associated with ejaculatory dysfunction. J Sex Med. 2008. 2,437人の男性を解析し、若年の早漏男性で高いテストステロン、年齢の高い遅漏男性で低いテストステロンとの関連を報告しています。
- The association of reproductive hormones, thyroid function, and vitamin levels with premature ejaculation: A prospective case-control study. Investig Clin Urol. 2024. 早漏群で総テストステロンが高かったことを報告しています。
- Mohseni MG, et al. Serum testosterone and gonadotropins levels in patients with premature ejaculation: A comparison with normal men. Adv Biomed Res. 2014. 早漏群で遊離テストステロンが高かったものの、因果関係については追加研究が必要としています。
- EAU Guidelines on Sexual and Reproductive Health 2026 — 2026年版ではHypogonadismおよびDisorders of Ejaculationのエビデンスが更新されています。